嘘日記。

おおむね嘘を書いている。

10/2

宇宙に放り出されてからどれくらい経ったのか、もはや分からない。

センターと繋がれていたケーブルが切れてしまった時、腕の画面に酸素の残り時間が表示されていたはずなのだが、気付いたらerr表示のまま動かなくなっていた。酸素はぼくの背中に背負われたボンベの中に入っている。宇宙服を着たまま振り返って自分の背中を確認することが出来ないので、ぼくの命を繋いでいるボンベの中身を、ぼくはこんなに近い距離で見ないまま宇宙空間を漂っている。

Hp-sml星団を探査するのがぼくたちの任務だった。仲間ともあの瞬間、みんなはぐれてしまった。通信機器も繋がらない。

 

持って数時間の命だと分かっていたので、最初の数分間は絶望した。

だんだん呼吸が苦しくなって意識が薄れて、そして暗闇が訪れるのだろう。

だが脳内の暗闇と向き合ううちに心は落ち着いてきた。どうせ今生きている現実も、目の前は果てしない暗い世界でしかない。生きる時も死ぬ時も見える景色は同じだ。それならば最後の時間を、静かな気持ちで過ごそう。ぼくは人生の最後の数時間を祈ることにした。生まれてからこれまでのさまざまな出来事と出会いを反芻しながら、その全てに祈ることにしたのだ。

後悔、反省、感謝……さまざまな気持ちが浮かんでは、心の深い泉の中に静かに沈んでいった。

 

宇宙センターから飛び出した瞬間、音のない浮遊、そして突然のトラブルとパニック、絶望までを全て反芻し終えた後、もう思い出が現在に追いついて思い出すものが何もなくなった時、ようやくぼくは気が付いた。まだぼくは生きている?