2021-01-01から1年間の記事一覧
ダイエットには勉強がいちばんだよ。脳が一番糖分を消費するからね。好きなだけ食べて、猛烈に脳みそを使えばいいのさ。
天才少年が歳を取る。 天才少年は、天才少年と呼ばれた青年になる。 天才少年はすばらしい才能を努力によってさらに輝かせ、有望な青年となる。 青年はさらに道を究め、立派な大人になる。 彼はまだ若いが、多くの業績を持ちウィットに飛んだ発言で聴衆を笑…
トランポリンが大好きだった。 朝起きたら部屋のトランポリンを跳び、地面の弾力がもっとあればいいのにと思いながらステップを踏んで登校し、家に帰ったらランドセルをおろす間も惜しんでトランポリンを跳んだ。大人になってもトランポリンで生きていくのだ…
『夢喰うバク』 悪夢を獏にあげれば、二度と同じ悪夢を見ずに済むという。 悪夢をたくさん押し付けられて、獏は消化不良を起こさないのだろうか。 バクの姿かたちは、2000万年前から変わっていないらしい。 もうあの無駄のない削ぎ落とされたフォルムは、完…
『夜のきりん』 夜に見るきりんは、大きくて堂々として美しかった。 自分よりはるかに大きな生き物が、ゆうゆうと地を歩くさま。 わたしは感動していつまでもいつまでも眺めていた。 きりんは、昼と同じように、長いまつ毛を風にそよがせ おだやかな黒目でわ…
道端で干からびたカラスの死骸を見るような目だ、と僕は感じた。 感じたので、感じたままに僕は口に出して言った。 「道端で干からびたカラスの死骸を見るような目だね」 テーブルの向かいに座っている彼女はそれには返事をせずに冷たく言い放った。 「じゃ…
タナカくんは体臭のきつい子だった。 クラスのみんなそれに気づいてた。 誰かがタナカくさいって言った。 みんな確かにそうだって思った。 タナカくんはそんなこと言わないでよって言った。 タナカくんは優しい子だったけど特に他に目立つ特徴のある子でもな…
最も静かなこと。 それは祈り。 最も良いこと。 それは素直さ。 最も悪いこと。 それは悪いことが起きた際のまずい対応。 最も恥ずべきこと。 それは恥を恥とも気付かずに、ひけらかす態度。
知らない人に手紙を書く。 会ったことのない人に。 会ったことがないので、その人がどんな髪型をしているのか分からない。 どんな声で話すのか、考え事をするときにどんな仕草をするのかも。 知らないままに手紙を書く。 失礼のないように、相手がほんの少し…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 かわいい化粧品が大好きなので、キラキラしたアイシャドウをいっぱい買った。 塗っていちばん気分が上がるのは口紅なので、赤やオレンジやピンクや、ちょっと個性的なパープルとかグリーンまで色…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 彼女は夢を見ない。 ちょっとした手違いで、レム睡眠を見る遺伝子が彼女の中から失われてしまったからだ。 レム睡眠を見るための、M1とM3の遺伝子が彼女の体の中にはない。ひとつも。 だから彼女…
おおむね嘘の日記を書いている。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 家庭教師先の中学生の生徒の母親からメッセージが届く。 家にいる時間のほとんどを、娘はゲームばかりして過ごしている。 テストが近付いても全く勉強しようとしない。 最近は有料課金のあ…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 デジャヴをよく見る。 見るたびに、マトリックスの異常だ、とつぶやく。 黒猫が2度自分の前を横切る。 初めての色の組み合わせで塗った爪を前にも見た気がする。 友達が話していたオカルト話の結…
「SFはもう、流行しないの?」 瘴気マスクの向こうでヴォーカリストが歌う。 煽りを受けてオーディエンスは力強く拳を上げる。声を出すコール&レスポンスは禁じられているので、静かなリアクションだ。もちろんオーディエンスは全員瘴気マスクを付けて、簡…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 電車を待っていたら目の前で人が線路に飛び込んだ。 滑り込んできた電車が急ブレーキをかけて、ホームにいた人々がざわつき始めた。 アナウンスが聞こえてきたけど、人いきれで急に気持ちが悪く…
おおむね嘘の日記を書いている。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 緊張しない。 ステージの上に一人で立って何かを発表するときも、仕事で大事なプレゼンをするときも。 小学生のときに、週番という制度があった。児童が1週間ずつ交代で、週番という制度を…
今夜は満月だった。 宇宙にこれっぽっちも興味がないので、見なかった。
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 会ったこともないのに思い出すだけでむかむかするほど嫌いなひとがいて、今日は久しぶりに他人にそのひとの話をした。実際に会ったことがないので声を伴わないイメージの中、その嫌いなひとはお…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 世界が未知の疫病に侵されてなかなか収束の糸口が見えないので、人々は毎日マスクをつけ顔を隠し人と距離を保って暮らしている。それでも人々は仕事をし、食事を取り、眠り、なんとか毎日をやり…
嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 奏鳴多ちゃんは4月生まれの女の子なので、4歳だけど年少組さんの誰よりも背が高く声も大きい。ソナタちゃんと読む。ご両親ともにプロの社交ダンサーで、イギリスの名門ブラックプールの常連出場者だそう…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 小学校の同級生だったオンちゃんは温厚だけれど時々キレちゃう子だった。 体も大きくて、小学生なのに身長は170センチ近くあったと思う。 何かの拍子にプツンときちゃうと手が付けられなくなって…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 ひょんなことから、花粉症治療のために通っているアレルギー内科の医師が数年前のイグ・ノーベル賞の受賞者だと知った。びっくり仰天である。 月に1回通っているクリニックにはそんな情報は一切…
嘘の日記を書こうと思う。 本当のことを言うのが苦手なのだ。 街を歩きながら、今日は緑のタイルだけを踏んで歩こうと決めた。 道路は色とりどりのタイルで作られ、緑だけを踏もうとするといつもより少し大股になるか、斜めにステップを踏まなければならない…