嘘日記。

おおむね嘘を書いている。

10/9

『夜のきりん』

 

夜に見るきりんは、大きくて堂々として美しかった。

自分よりはるかに大きな生き物が、ゆうゆうと地を歩くさま。

わたしは感動していつまでもいつまでも眺めていた。

きりんは、昼と同じように、長いまつ毛を風にそよがせ

おだやかな黒目でわたしたちを見下ろしている。

きりんの目に、わたしたちは、どう映るのだろう。

 

子きりんが、母きりんにそっと寄り添った。

子と言えども、背丈は2メートルをゆうに超えている。

2頭は立ち止まって、夜の風を静かに感じている。

自然が作り出した、その美しい模様。

完璧なそのフォルムが、大小並んでわたしの目の前にそびえている。

 

母きりんは、出産の時も立ったまま子を産むのだろうか。

あんな高さから産み落とされたら、子きりんはどすんと地面に当たって驚いたりしないのだろうか。

それでも子きりんは、生まれたての濡れた体を懸命に起き上がらせるのだろう。

 

別のきりんが母子の前を横切った。

ゆうゆうと、ゆったりと、

その体の大きさに見合った時間の流れの中で。

 

こんな美しい生き物を生み出し、彼らが自然に生きているサバンナは、どんなところだろう。

乾いた風のにおいを、わたしは想像する。

この大きな、美しい完璧な生き物。

夜のライトに照らされるきりんを、わたしはいつまでもいつまでも眺めている。