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『夜のきりん』
夜に見るきりんは、大きくて堂々として美しかった。
自分よりはるかに大きな生き物が、ゆうゆうと地を歩くさま。
わたしは感動していつまでもいつまでも眺めていた。
きりんは、昼と同じように、長いまつ毛を風にそよがせ
おだやかな黒目でわたしたちを見下ろしている。
きりんの目に、わたしたちは、どう映るのだろう。
子きりんが、母きりんにそっと寄り添った。
子と言えども、背丈は2メートルをゆうに超えている。
2頭は立ち止まって、夜の風を静かに感じている。
自然が作り出した、その美しい模様。
完璧なそのフォルムが、大小並んでわたしの目の前にそびえている。
母きりんは、出産の時も立ったまま子を産むのだろうか。
あんな高さから産み落とされたら、子きりんはどすんと地面に当たって驚いたりしないのだろうか。
それでも子きりんは、生まれたての濡れた体を懸命に起き上がらせるのだろう。
別のきりんが母子の前を横切った。
ゆうゆうと、ゆったりと、
その体の大きさに見合った時間の流れの中で。
こんな美しい生き物を生み出し、彼らが自然に生きているサバンナは、どんなところだろう。
乾いた風のにおいを、わたしは想像する。
この大きな、美しい完璧な生き物。
夜のライトに照らされるきりんを、わたしはいつまでもいつまでも眺めている。