時間感覚が伸びたり縮んだりする。 さっきから1秒しか経っていない気もするし、永遠が挟まれていた気もする。 少なくともぼくの意識の中でぼくはまだ呼吸をしている。 感情の反芻も終えた。ぼくはただ呼吸する無となって塵の中に浮かんでいる。 と、その時そ…
宇宙に放り出されてからどれくらい経ったのか、もはや分からない。 センターと繋がれていたケーブルが切れてしまった時、腕の画面に酸素の残り時間が表示されていたはずなのだが、気付いたらerr表示のまま動かなくなっていた。酸素はぼくの背中に背負われた…
9月のメモ ジョセフミって名前ずっと覚えられない。 7部の爪もどうなのって思ったけど、ソフト&ウェットもなんか地味で弱そう。 ストーン・フリーと豆ずくライさんの能力って近いかな。 8部に首を捻るなら、それぞれの能力どんどんしょぼくなってない?って…
② 気の置けない友人のわたしの前では大体いつも傍若無人の権化であるところのリサが、今日は珍しくションボリしている。見るからに覇気がなくため息が多い。聞いて欲しそうなので親切に聞いてあげることにした。 「どうしたの、元気ないけど」 「そうなのよ…
① リサは男によくもてるが、それが不快で仕方ないらしい。 わたしなぞ一般庶民代表の、あまり大勢に一挙に言い寄られた経験のない者からすれば、さぞ気分の良い状態なのではと思うのだが、現実に日々それを体験している彼女は断固こちらの意見を否定する。 …
そこに思想はあるのかいそこに大義はあるのかいそもそも思考したことがあるのかいそれは君自身の思考かいちゃんと考えてから、出来てから、ってうやむやに煙に巻くようなことばかり言っているうちに君の中身はひとつも完成されないまま、歳ばかりくった理屈…
イライラする。そんなときは深呼吸すればいいんだよ。イライラする。イライラしているときって、深呼吸すればいいって思い出せない。
リスペクトを感じない相手に対しては結局表面上取り繕っていてもリスペクトのない振る舞いしかできないので。いつか何かのきっかけでそれはお互いに気付くので。ヒビが入るのは防ぎようのないことで。ただそれがいつになるか、というのだけ。 ではそんな相手…
夢が足りない。ばくばくばく。最近は現実ばかり食べているから、夢が足りない。ばくばくばく。現実はしっかりした歯応えがあり、実用的で、すぐに栄養を吸収できる。ばくばくばく。現実ばかり食べていると夢の味を忘れてしまう。夢はもっとふわふわとして、…
ヤバい思想の人にヤバさ全開で襲いかかってこられると瘴気に当てられてたいへん疲弊してしまう。他者に対して過剰に攻撃的になる歪み。自分であまりに固く固く結んでしまってもうほどきようのない過去の結び目。他人は静かに去って合掌するしか出来ない。
怒りはエネルギーになる。怒りはエネルギーになるのに、もう何年も怒りを覚えていない。怒りを忘れてしまったよ。心のエネルギーが枯渇してしまった。乾いた荒野のように、心の温度が上がらない。
「レーニンはベートーヴェンの『激情ソナタ』を批判した。"これを聴くと、革命が達成できない"」
電車に乗ろうとしたら、殺人犯が降りてきた。顔を見ただけで分かったよ。
(混乱による強制的な静かさの中の、奇妙な幸福。)
嘘つきって言われると、傷つく。
覚醒の日は選べない。積み上げていくしかないんだよ。
思想が強い、って言われたんですけど、これって悪口ですかね。
半人前だから緊張すると足に力が入らなくなるんだよ。下半身を鍛えなきゃいけない。四股を踏むんだ。
エネルギーはストーリーに宿るのではない。
嘘を練り上げるにも労力が要る。わたしはほとんど記憶のない女。
ダイエットには勉強がいちばんだよ。脳が一番糖分を消費するからね。好きなだけ食べて、猛烈に脳みそを使えばいいのさ。
天才少年が歳を取る。 天才少年は、天才少年と呼ばれた青年になる。 天才少年はすばらしい才能を努力によってさらに輝かせ、有望な青年となる。 青年はさらに道を究め、立派な大人になる。 彼はまだ若いが、多くの業績を持ちウィットに飛んだ発言で聴衆を笑…
トランポリンが大好きだった。 朝起きたら部屋のトランポリンを跳び、地面の弾力がもっとあればいいのにと思いながらステップを踏んで登校し、家に帰ったらランドセルをおろす間も惜しんでトランポリンを跳んだ。大人になってもトランポリンで生きていくのだ…
『夢喰うバク』 悪夢を獏にあげれば、二度と同じ悪夢を見ずに済むという。 悪夢をたくさん押し付けられて、獏は消化不良を起こさないのだろうか。 バクの姿かたちは、2000万年前から変わっていないらしい。 もうあの無駄のない削ぎ落とされたフォルムは、完…
『夜のきりん』 夜に見るきりんは、大きくて堂々として美しかった。 自分よりはるかに大きな生き物が、ゆうゆうと地を歩くさま。 わたしは感動していつまでもいつまでも眺めていた。 きりんは、昼と同じように、長いまつ毛を風にそよがせ おだやかな黒目でわ…
道端で干からびたカラスの死骸を見るような目だ、と僕は感じた。 感じたので、感じたままに僕は口に出して言った。 「道端で干からびたカラスの死骸を見るような目だね」 テーブルの向かいに座っている彼女はそれには返事をせずに冷たく言い放った。 「じゃ…
タナカくんは体臭のきつい子だった。 クラスのみんなそれに気づいてた。 誰かがタナカくさいって言った。 みんな確かにそうだって思った。 タナカくんはそんなこと言わないでよって言った。 タナカくんは優しい子だったけど特に他に目立つ特徴のある子でもな…
最も静かなこと。 それは祈り。 最も良いこと。 それは素直さ。 最も悪いこと。 それは悪いことが起きた際のまずい対応。 最も恥ずべきこと。 それは恥を恥とも気付かずに、ひけらかす態度。
知らない人に手紙を書く。 会ったことのない人に。 会ったことがないので、その人がどんな髪型をしているのか分からない。 どんな声で話すのか、考え事をするときにどんな仕草をするのかも。 知らないままに手紙を書く。 失礼のないように、相手がほんの少し…
おおむね嘘の日記を書く。 本当のことを書くのが苦手なのだ。 かわいい化粧品が大好きなので、キラキラしたアイシャドウをいっぱい買った。 塗っていちばん気分が上がるのは口紅なので、赤やオレンジやピンクや、ちょっと個性的なパープルとかグリーンまで色…