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おおむね嘘の日記を書く。
本当のことを書くのが苦手なのだ。
小学校の同級生だったオンちゃんは温厚だけれど時々キレちゃう子だった。
体も大きくて、小学生なのに身長は170センチ近くあったと思う。
何かの拍子にプツンときちゃうと手が付けられなくなって、掃除用具の入ったロッカーを掴んでそこに泣きながら何度も自分の頭をぶつけるのだ。
男の先生たちが2人、3人がかりでなんとか引き剥がそうとするのだけれど、顔が真っ赤になるくらい頭に血が上ったオンちゃんの握力は凄まじく、絶対にロッカーを離そうとしなかった。
ちょっと怖かったけれど、わたしたち同級生は意外に冷静にその光景を見つめていたと思う。ああ、またキレちゃったんだなーっていう風に。先生方はさぞ気を揉んでいたことだろう。
オンちゃんが自分の中の言葉に出来ないどんな感情を、ロッカーと自分の頭にぶつけていたのかは分からない。結局その後オンちゃんは強制収容所みたいな進学校に無事合格し、学校の規則通り頭髪を短く切ってさらに伸びた身長を持て余しながら学校に通った。中学では掃除ロッカーよりもっと柔らかい、優しい何か掴めるものを彼が見つけているといいと思う。